コラム「風」令和6年9月
四季おりおり
秋田県美郷町長 松 田 知 己
昨年に続き、今年も例年とは違う夏でした。もはや普通でないことが普通という、非日常が日常化している状況です。今後を考えると末恐ろしさを感じているのは、私だけではないと思います。
一方、こうした中でも季節は着実に移ろいます。稲穂は徐々に黄金色に変化し、出来秋に着実に向かっております。もうひと月もせずに、山の色も着実に変化していくだろうと思います。異常気象であっても、日本における四季の移ろいは変わりません。
こうした四季の移ろい、例えば稲穂の色の変化もそうですが、それぞれの感性で何かを感じ何かを思うことは、私はとても大切なことではないかと思います。と言いますのも、人と人、自然と人、物や出来事と人との関係性の中で生きている私たちにとっては、変化を感じる力、それにより喚起される感情や思慮は、より人間らしい生活に必要であると信じているからです。私自身もできる限り変化に対する適切な敏感さは、常に意識しているところです。
しかしそうした感性は、一朝一夕に錬磨されるわけではありません。日常の小さな積み重ねの中で磨かれていくものと私は思います。こうした認識を踏まえてですが、町では感性を磨く一つの機会として、日常的に触れることができる芸術作品を制作するプロジェクトをスタートさせました。「美郷の四季プロジェクト」です。町内3地区それぞれで四季折々のポイントを定め、春夏秋冬それぞれの風景をモチーフにした作品を制作してもらいます。制作画家は美郷大使の永田萠氏、町出身で洋画家の澁谷重弘氏、日本画家の山田美知男氏です。毎年一作ずつ制作し、作品は町学友館に常設展示する予定です。従って、4年掛かりのプロジェクトとなります。
また、その風景箇所は写真撮影もします。実風景が芸術作品としてどう表現されるのかも楽しむことができる仕掛けです。町民みなさんの感性を日常的に刺激しながら、美郷町自体の個性をさらに確立していくことにも繋がると私は信じております。
どちらかと言えば夏はビールが多かった私。そろそろ日本酒の「ひやおろし」のシーズン。あ~、季節の移ろい、万歳!
(広報美郷 令和6年9月号より)