コラム「風」令和7年6月

よくばった目的

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秋田県美郷町長 松 田 知 己 

 天候は不順だったものの田植え作業も進み、新緑が深緑に変わる時季、そして梅雨を迎える時季を迎えました。目で感じ、肌で感じ、体を通しての自然の移ろいを情緒的に受け止めたところです。
 さて、町内三地区の春夏秋冬の景観をモチーフに絵画を制作していただく「美郷の四季 絵画制作プロジェクト」、第一作目の「夏」三作品が完成しました。夏の情緒を感じる素晴らしい作品で、プロジェクト推進者としてはとても嬉しく思います。その嬉しさは、このプロジェクトの目的達成ができる予感を持てるからですが、第一作目完成の機会に、改めてこのプロジェクトの目的を説明いたします。実は「一粒で三度おいしい」という、よくばった目的です。
 
 私はこのプロジェクトに三つの願いを込めました。一つ目は、身近に存在する風景を画家がどう切り取り、どう表現しているのかを鑑賞し、合わせて実際の風景写真と比較することで、芸術表現について考えるきっかけにすること。二つ目は、風景が時間経過とともに必ず変化することを踏まえ、未来における「現在の姿」と絵として残った「過去の姿」を未来の町民が見比べ、何かを思う素材になること。三つ目は、この作品群を学友館にて特別展がない期間できる限り常設展示をし、学友館の日常風景として来館者の無意識の記憶に浸透させるとともに、その記憶が何かの機会に思い出され、その方に人生に何かをもたらしてくれること。「一粒で三度おいしい」とする目的、こういう内容です。

 絵画は、鑑賞する方の心を柔らかにします。鑑賞することで何かを感じ、考えるきっかけとなるからです。そのため、町ではそうしたきっかけづくりとして、合併20周年では「町の木、花、鳥、魚」のシンボル絵画を制作しました。作品はクリアファイルに印刷して町民みなさんにお届けしておりますので、ご承知のところです。こうしたきっかけは、もちろん少ないより多い方が良いに決まっています。こうした価値観で本プロジェクトを進めているところです。
 今後、春、冬、秋と作品を制作していただく予定です。取り組み主旨にご理解いただくとともに、次はどういう作品が目の前に現れるか期待していただきたいと思います。また、今後の作品展示の際には、是非ともよくばった目的を思い出してもらいながら、20周年記念作品とともにご覧いただきたいと思います。

 

(広報美郷 令和7年6月号より)

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