コラム「風」令和5年3月

春へのスイッチ

秋田県美郷町長 松 田 知 己 

 「冬来りなば春遠からじ」。イギリスの詩人シェリーの「西風の賦」の一節です。私は例年、朝の雪寄せ作業が本格化する12月頃からこの一節を思い起こし、気の進まない作業や日頃の寒さに向き合いますが、ようやく春の足音が聞こえる三月に入りました。まさに「春遠からじ」の月です。これから徐々に日射角度は高くなり、それに応じて気温も上昇、呼応して木々の芽は膨らみ方が加速していくわけですが、雪解けに併せて森羅万象が春に向かう変化を把握し、風情として楽しみたいものです。

 さて、こうした春に向けたうごめき、私たちの普通の生活の中でも当然あります。4月の新年度開始に向けた準備、具体的には進級や入学、入社や転勤による転居などがある方は、その準備で慌ただしさが伴う月です。これも3月独特の風情として楽しみつつ、春が持つ高揚感とともに、準備に (いそ) しんでいただきたいと思います。

 他方、自然を相手に業を営む農業も、いよいよ令和5年営農の計画を見通す月となります。農業については、最近の物価高などから食料安全保障の国民意識が向上し、併せて国内農産物に対する消費者意識も高まってきておりますので、まさに今が踏ん張りどころです。

 しかし、農業生産においても物価高による影響は避けられません。まずは営農開始に必要な肥料の価格が高騰しています。ものによっては2倍近くとの声も聞きます。そのため、営農継続に支援策が必要とし、国では一定の要件のもと、価格上昇分の7割を支援することにしております。町でも農業者のやる気向上に資するよう、国の支援にさらに2割5分を嵩上げする制度を既に準備しているところです。農業者にはこうした国、町の支援策を承知していただき、営農意欲を萎ませずに令和5年営農をがんばっていただきたいと思います。なお、支援に係る国の基準は間もなく提示される予定です。

 すべての分野に共通ですが、やる気スイッチは自ら入れるしかありません。仕事であれ遊びであれ、春らしい高揚感でやる気スイッチ、みなさんで入れていきましょう。

(広報美郷 令和5年3月号より)

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