コラム「風」平成28年10月

過程の大切さ   

秋田県美郷町長 松 田 知 己

 基本的に私は何でも読む乱読です。しかし推理小説から本格的読書に入ったためかその類(たぐい)が好きで、書店では推理小説を探す時間が長いように思います。その推理小説、面白さは何と言っても最後の種明かしですが、「ビックリ仰天!」もあれば「やっぱりな~」もあります。共通するのはその過程に必ず結末に至る種があること。「あの場面がそういうことだったのか」なんて思わせるところが面白い訳ですが、改めて「過程の大切さ」を考えさせられるところです。

 その過程の大切さ、例えば仕事や人間関係など物語性のある事柄には、すべて共通だろうと思います。なぜその結果に至ったのか、それを一定の確かさで理解するには過程を把握することが必要で、裏返して言えば、過程を把握していれば結果についてある程度正確に理解や認識できる可能性が高くなる、ということだろうと思います。そして物語性の高い分野の一つである芸術についても、もちろんその例に倣(なら)うと思います。作品の制作過程を知っているからこそ完成作品に対する見方が深くなる、あるいは幅広い視点で理解することができる、ということがあると私は思っております。

 その芸術作品に関し、今月下旬から来月上旬にかけて、制作過程を見られるプロジェクトが美郷中学校で展開されます。東京日本橋東ロータリークラブ様から寄贈される絵画が、中学校体育館の壁面に制作されるからです。大小島真木さんという画家が美郷町に滞在しながら作品を仕上げるもので、生徒は制作過程を最初から最後まで見ることができます。得難い機会です。生徒には意義ある機会になることを期待しております。過程を見ることの大切さ、それぞれの感性で受け止めて何かを考えてもらいたいと思います。

 この取り組み、できればみなさんにも見てもらいたいと思いますが、どうしても授業への影響を考えないといけません。そこで制作途中に1回、完成後に1回の計2回、鑑賞機会を設けます。是非とも足を運んでいただき、両方ご覧いただきたいと思います。その比較の中に、きっと面白さ倍増の種、ありますので!

(広報「美郷」平成28年10月号より)

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