コラム「風」平成28年9月

祈りの意味   

秋田県美郷町長 松 田 知 己

  みなさんもご覧になったリオ・オリンピック。多くの感動がありました。メダルを得た体操や柔道、卓球やバドミントンなどに加え、私はラグビーの躍進にも感動しました。素晴らしい試合でした。

 そのラグビー、昨年のW杯で強豪南アフリカに勝利したことで一気に人気が出ましたが、その中心は五郎丸選手。ゴールキックの際に忍者のように手を合わせて方向を見定める独特のポーズは、「ルーティン」という言葉とともに、大変に話題になりました。

 そのルーティン。テレビ画面では、ゴールキックへの「祈りの行為」のように見えます。スポーツで強くなるためには、体と技を鍛える練習の積み重ねはもちろんでしょうが、心を鍛えるとともに鎮めるあのような行為も、とても大切に思えてくるところです。

 翻って日常生活。祈るという行為、実に日常茶飯事です。仕事や勉強はもちろんのこと、人によっては恋愛や賭け事までも祈っています。私も、よく神仏に祈ります(神様も仏様も「またかよ~」と言っているでしょうが)。ですがこの「祈る」という行為、やはり大切と思います。自分に関係するお祈り事は、実は自分の弱さなどの把握であり、一方でそれを認める強さにも繋がると思うからです。そしてそうした自分の実体を認識することは、他者に目を向ける場合に、他者への優しさにも至ると思うからです。その意味で祈りの行為は、深みのある優しさを醸成する入口かも知れません。

 今月十七日、その「祈り」をテーマにした美郷カレッジを開催します。日本を代表する宗教学者の山折哲雄さんと美郷大使の永田萠さんの対談ですが、東日本大震災後の心の復興を核心に据えた対談とのことで、改めて「自分にとっての祈りの意味」を考えるきっかけになるものと思います。こうしたテーマで、しかもこのお二人による対談は得難い機会です。多くの方のご参加を期待しております。

 さて、今月はいよいよ千屋出身の藤井新悟さんが出場するリオ・パラリンピックです。まずは心から地元選手を応援しましょう。そして「人を想う」優しさを伴って、勝利への祈りを捧げましょう。

(広報「美郷」平成28年9月号より)

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