コラム「風」平成28年4月

以心伝心   

秋田県美郷町長 松 田 知 己  

 庭の福寿草が3月中旬、咲きました。暫し眺めているうちに「花」の存在意義を考えている自分がいました。ふと「風姿花伝」を思い浮かべましたが、室町時代に世阿弥が記した「風姿花伝」、「その風を得て、心より心に伝わる花なれば、風姿花伝と名付く」という能の奥義が書の由来とのこと。師弟間の以心伝心が核心にありますが、福寿草を眺めながら、改めて以心伝心の難しさを実感しました。

 既に報道されているとおり、町観光協会に派遣した町職員が不正な行為をしました。町の責任者として、改めてみなさんに心からお詫びを申し上げます。私は町長に就任以来、合併町である美郷町は、町民から信頼を寄せられる存在であらねばならないという姿勢で、仕事に向き合ってきました。そしてこの姿勢、以心伝心、必ず職員に伝わると信じていました。しかし全員には伝わっていませんでした。自分の不徳です。誠に申し訳ありません。今後、さらに自分を磨くとともに、失った信頼回復に職員一丸でがんばってまいります。ご鞭撻、ご指導をいただけますようお願いいたします。

 さて、その以心伝心、社会のあらゆる場面において求められることは申すまでもありません。言葉にしなくても伝わること、これは社会活動における潤滑油のような役割です。それがある故に、円滑な人間関係や適切な業務推進に繋がっているのだろうとも思います。ただしそれが機能するためには、「意志」と「価値」に対する基本的な「共感」が必要です。その共感をどう得るのか、それが難しいわけですが、やはり地道に取り組む以外ないのかも知れません。人の心が関わっているからこそ、「急がば回れ」なのかも知れません。

 そんな思いを込めて、4回目になる美郷大使の「まちづくりパネルディスカッション」を開催します。みなさんご参加ください。積み重ねの中で、大使の心が「以心伝心」みなさんの心に伝わることを願っております。そしてその結果、町づくりに対する私どもの意志に共感を持っていただけることを願っております。「誇れる美郷」の実現、引き続きみなさんで取り組んでいきたいと思います。

 (広報「美郷」平成28年4月号より)

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