コラム「風」平成24年9月

ひとまず、安心

秋田県美郷町長 松 田 知 己 

 先般、東京大学地震研究所を訪ねてきました。目的は、千屋断層を抱えている地として、東日本大震災後の断層由来の直下型地震について教えを乞うためです。結論から言えば、現在の理論的評価方法では、明治29年に発生したマグニチュード7規模の直下型地震が僅か100年後に発生することはあり得ないということでした。詳しく教えていただいた地震研究所の佐藤比呂志教授の前で、「あ〜良かった」という言葉が自然に口から出ました。

 先生曰く、「断層面は押し合う2つの力が合わさる所に存在しているが、今回の大地震で片方の押す力が緩み、断層面の緊張が緩んだ」とのことです。従って、千屋断層由来のM7規模の地震の発生は、一定の長い期間ほぼ心配ないということでした。また、M7規模の地震が100年周期で発生した例は世界にもないとのことです。なお、一定の長い期間とは、地震学の世界で言われている「周期の倍・半分」の期間で、地震周期の2倍から1月2日の期間を指すとのこと。千屋断層の地震周期はおよそ3千年とのことですので、6千年から1千5百年の期間を指すということなります。

 ただし、緩んだおかげで断層面に垂直方向のひびは発生しやすくなり、ひび由来の地震は発生するとのことです。大震災後の頻発地震はどうもそれらしいです。また、緩んでいない所は緊張継続とのことで、東北以外で大地震の可能性があるとのことでした。従って、M7未満の地震発生には引き続き注意が必要ですし、東北以外での大地震に伴う影響にも注意が必要となります。油断は禁物ということです。ですので、引き続き町の防災体制の強化はできることを着実に積み重ねていくつもりです。ご協力お願いいたします。

 今回、専門家からお話しを伺うことができたのは、ひとえに美郷大使の佐々木毅先生のおかげです。佐々木先生のネットワークがなければ実現しませんでした。改めてネットワークのありがたさを実感です。私自身も、より広いネットワークを持てるように、「自分磨き」、さらに努めたいと思います。

(広報「美郷」平成24年9月号より)

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