コラム「風」平成23年9月

判断の根幹

秋田県美郷町長 松 田 知 己 

 先日、県内某紙に郷土資料館(旧本堂分校)の解体に関する記事が掲載されました。読んで「おやっ」と思ったのが、「こういうとらえ方のみでは読者に誤解を与えてしまうな」ということです。そのため、今回はこの件の情報を提示し、誤解を避けたいと思います。

 美郷の将来を考え、町が役場庁舎など公共施設の再編に取り組んでいることは、皆さんご存知のとおりです。その中には、町内に3ヶ所ある資料館も含まれています。当初計画では、郷土資料の展示は学友館に集約する計画としていました。

 しかしその後、学校統合に伴う空き校舎の活用検討の中で、空き校舎を郷土資料の展示施設として活用した方が良いとの住民委員の意見もあり、再検討し、現在の千畑南小校舎に概ね集約する計画としたところです。なお、公共施設再編計画の見直しに当っては、町議会と議論を重ね、パブリックコメント等により町民各位からも見直し案への意見を求め、見直し計画を決定しております。一連の手続きの中では、千畑南小校舎を資料展示施設とすること、学友館の機能を一部移転すること、旧本堂分校を解体することなどに異論は寄せられておりません。

 一方、旧本堂分校については、築年数なども考慮し、建築専門家も入れた検討会で取り扱いを検討してきました。その論点は3つです。建築物として文化財的価値があるか、文化財収蔵施設として適切か、安全な公共施設として今後維持するにはどの程度経費が必要か、でした。結果は、移築時の改造で文化財的価値は確実に損なわれていること、多湿環境への立地で文化財が痛みやすいこと、移築時の基礎工事や従前の管理の問題から安全性確保に多額の経費が必要なことが分かりました。そのため、断腸の思いで将来の解体を決断しております。なお、千屋地区には坂本東嶽邸もありますが、これも改修時の基礎工事ほかで難点がありましたが、東嶽翁の遺徳を偲ぶとともに千屋断層の資料展示など将来的なことを見据え、残すべき施設としてまずは3千6百万円程の経費でまもなく改修に着手します。

 私たちの財源には限りがあります。その中で、「最大多数の最大幸福のために、残すべきは残しながら、決断すべきは決断して、町の未来を考える」ということが町の判断の根幹です。こうした町の姿勢に改めてご理解をお願いいたします。

(広報「美郷」平成23年9月号より)

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