コラム「風」平成22年4月

がんばる春

秋田県美郷町長 松 田 知 己 

 「春眠(しゅんみん)暁(あかつき)を覚(おぼ)えず」。ご存知、中国は唐時代の詩人、孟(もう)浩然(こうねん)の「春(しゅん)暁(ぎょう)」の冒頭です。孟浩然が詠(よ)んだ春と美郷の春の違いは知りませんが、気持ちは本当に分かるこの頃です。

 さて、自然界は人の眠り以上に春に反応しているようで、道端にはあちこちにフキノトウが顔を覗かせています。春の食材という視点ではなく、純粋に植物としてのそれを見るにつけ、「あ〜春だなあ」と思うとともに「がんばらないとな」と思うところですが、みなさんはそう感じたことないでしょうか。

 「なんでフキノトウでやる気なんだ」と自分でもちょっと可笑(おか)しくなるわけですが、そこには、季節に合わせて反応しているフキノトウへの畏敬(いけい)の念があります。植物生理上は当然のこととは言え、意志のないフキノトウが春に反応している姿に触れて、「意志ある自分はやるべきことにきちんと対応しているだろうか」との想いにつながり、「がんばらないとな」に至っているようです。(このこと、実は春に限ったことではありませんが・・・)

 ということで、この春にがんばらなければならないこと、挙げてみると例年に比べてたくさんあります。まずは新しい公共施設体制での業務。とりわけ六郷公民館業務を引き継ぐ「中央ふれあい館(旧清水苑)」は、支障のない利用に万全を期します。同じように、新生六郷小学校での教育推進も、必要な対応には迅速さに留意します。次に統合中学校の増築工事の発注事務。名前も美郷中学校に決まり、24年4月開校に向けて準備を着実に進めます。そして「こども手当て」や「米の戸別所得補償」など、新たな制度の推進にも万全を期します。このほか、景気刺激のための工事等の早期発注や緊急雇用対策の各種取り組みの早期着手など、不況を踏まえていろんな取り組みにがんばらなければなりません。

 しかし、あんまり考えすぎると漫才の春日(かすが)三球(さんきゅう)・照代(てるよ)ではありませんが、「夜も眠れなくなっちゃう」ことになります。たまには、暁を覚えないことも許してメンタルヘルスに留意し、就職・進学など新たな環境でがんばる方々と同様、がんばる春にしたいと思います。

(広報「美郷」平成22年3月号より)

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