コラム「風」平成21年5月

そのこころ再び

秋田県美郷町長 松 田 知 己 

 この時期に私の心の中で存在感のある歌。「しき嶋の やまとこころを人とはば 朝日ににほふ 山さくら花」。江戸時代の国学者本居宣長の歌です。批評家の小林秀雄は、純粋に桜を愛でる素直な心である旨解説していますが、本当はもっと深いところで、宣長の心に同調できる一流の批評家の、私には及ばぬ深い理解があるのだろうと思います。

 さて、歌の世界では作者の心の機微を、読者それぞれの感受性で理解しても構いませんが、私ども行政の仕事はそうはいきません。取り組みの背景や気持ちがきちんと理解いただけるよう、できる限りお伝えしなければなりません。そこで今月号も、現在の重要課題である公共施設等の再編について、先月号に続いて説明をさせていただきます。

 財政が厳しい環境にあることは皆さんご存知のとおりです。予算規模で見ると、住民生活に直結する一般会計は、ここ4年間で約10億円の収入減です。さらに合併特例期間が過ぎれば交付金は約9億円減少する見込みで、収入は先細りです。一方支出は、三位一体改革で児童手当関係だけでも約2,500万円の負担増ですし、農政改革の関係で農地・水・環境保全対策で約4,500万円の負担増となっています。つまり、収入は減るものの必要な支出は増加しているということです。他に比べて遜色のない施策水準を維持するには、どこかで我慢をしなければならないことがご理解いただけるものと思います。これまでは、私どもや議員各位の報酬減額、職員数や議員定数の削減など、町と町議会が一緒になって各般にわたる努力をしてきましたが、これからはそれだけでは太刀打ちできません。

 そこで公共施設の再編となります。基本は、これまでの役割をどこかの施設で受け持ってまとめていく考え方です。仮に今後も施設を現状維持するとすれば、修繕費や耐震補強などにかなりの予算が取られ、必要な行政サービスに必ず影響が生じます。目の前にある施設が転用や解体されることは残念なことで、私も好んで進めたいわけではありませんが、将来のためには着手が必要です。今後も、誇れる水環境の維持や心豊かな教育の推進、交流による活力ある美郷づくりを進めるため、どうかご理解とご協力をお願いいたします。

(広報「美郷」平成21年5月号より)

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