コラム「風」平成19年10月

会話

秋田県美郷町長 松 田 知 己 

 読書に相応しい夜長の秋になりました。と言うものの自分はどうかと言いますと、なかなか忙中閑を見いだせず、最近しばらくは読書から離れている状況です。しかし元来本好きの私は、読めないかも知れないと分かっていても、気になる一冊との出会いは一期一会と思うところがあり、ついつい買ってしまうため本は少しずつ増えているところです。

 従って、我が家には読まずに積み重なっている本もそこそこある訳ですが、先日、その中から将棋棋士の羽生善治さんが書いた「決断力」という本を選択し、読み始めました。安倍総理大臣がびっくり仰天の辞任を決断し、その意向を発表した頃です。

 読み進めていく中で正直、びっくりしました。というより一流とはこういうことかと舌を巻きました。棋士としての羽生さんの実績は皆さんご存知のことと思います。弱冠二十六歳で名人位や王将位など七大タイトルを独占した棋界の白眉です。そしてこの棋界の実力者は実に文章がうまい。一般に各界で活躍する方々は、その努力と相俟ってか素晴らしい人生観をお持ちですが、一流人には多才さにおいても天与の才があるようです。

 さて、そこで国体選手についてです。現在来町中の自転車競技選手、間もなく来町されるバドミントン競技選手、ともに各県代表の一流選手です。この道一筋の選手には、もちろん多才さを兼ね備えた選手もいらっしゃるはずです。その一面は外見からは分かるものではなく、会話がその糸口になるものと思います。ということで、できる限り機会を見つけて話し掛けてみたいものです。選手の思わぬ多才さと巡り合えるかも知れません。また、そうすることで表面的ではない、深い交流に繋がっていくようにも思うところです。

 そして、これも重要なポイントですが、私たちも選手の皆さんに美郷の一流の部分を感じてもらいましょう。それがおもてなしに対する心意気であったり、豊かな自然や伝統に育まれた農産品や特産品だったりするのでしょうが、これも会話から伝わっていくことです。民泊関係のみならず、皆さんが何らかの形で機会を見つけていきたいものです。

(広報「美郷」平成19年10月号より)

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