コラム「風」平成19年9月

まずは見よう

秋田県美郷町長 松 田 知 己 

 男鹿和雄さん。アニメの背景美術を描く画家で、「となりのトトロ」や「もののけ姫」など有名なアニメ作品では美術監督も努められた方です。その方の個展が開催されているということで、先日、鑑賞してきました。

 個展では、「となりのトトロ」などの作品から空想科学作品まで、幅広く展示されておりましたが、その数多い作品からは共通してある印象を受けました。透明感あるいは清澄感です。そこで、何故そう感じるのか内観してみました。辿(だど)りつく答えは、それが男鹿和雄さんの大切にしているもの、つまり「男鹿和雄」の真髄ではないかということでした。

 先般、町でご講演をいただいた絵本作家の永田萠さんの作品は、共通して温もりを感じさせます。会話をしてみると分かりますが、永田さんは人、とりわけ子どもを大切に思う方でした。また、日本画家の東山魁夷(かいい)画伯の作品からは、共通して諦念(ていねん)を感じます。ご自身の文章から理解できますが、東山画伯は深い洞察で人生観を深められている方でした。画風には、やはり人格や人生観が自然と滲(にじ)んでくるのだろうと思います。

 では、そうした人格や人生観の形成に影響を与える要素は何かを考えてみます。第一に浮かんでくるのが、幼少期に経験した出来事やその記憶です。ちなみに、男鹿和雄さんは大仙市太田町三本扇のご出身で、小さい頃よく千屋の松並木・杉並木に遊びに来ていたそうです。「となりのトトロ」に「見たことあるなあ」と思う風景があるのも納得です。

 小さい時にいろんな出来事を経験し、記憶に留めることが大切であるとすれば、今回のわか杉国体は、ぜひとも子どもたちの記憶に留めさせたいものです。そのため、町としては学校と連携をとって、観戦に配慮することになっておりますが、子どもたちが幅広く国体に触れることができますよう、どうかご家庭でもご配慮をお願いいたします。

 一流選手が繰り広げる試合は、きっと迫力とともに脳裏にしっかりと刻まれ、何らかの形で人格形成に寄与するだろうと思います。まずは大人から子どもまでみんなで見ましょう!

(広報「美郷」平成19年9月号より)

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