コラム「風」平成19年6月

成長と変化

秋田県美郷町長 松 田 知 己 

 薫風に揺れる稲に、か弱さと同時に生長に向けたしなり強さを感じ、思わず「今年もがんばれよ」と声を掛けたくなる美郷の風景になりました。仕事の原点が農業改良普及員である私にとって、意欲とともにある種の癒しを感じる時期でもあります。

 この「か弱くもしなり強い」稲は、実は地下では移植から数日で新根を伸ばし、栄養吸収をはじめています。また、地上では理論上第四葉期から分げつ(茎)を増やしはじめています。そして、立派な稲株に生長していく訳ですが、改めて生長とは変化であることを認識いたします。

 さて、このことが森羅万象の真理であるとすれば、私ども美郷町も成長を望むならば変化が必要です。では、ここでいう「町の成長」とは何か、「変化」とは何かということですが、町の成長とは、いろんな価値観を相互理解しながらも皆さんで共有できる幸せ感が向上すること。そして変化とは、望む未来に向かって見えてくる不具合な現状を改善していくことではないかと、私は常日頃考えております。

 町ではこうした共有できる幸せ感の向上に向けて、時に道路を整備し、時に施設等を整備し、そして時に制度の見直しや充実を行い、現状の改善、つまり変化することに取り組んできました。

 ここで大切なのは、こうした考え方や取り組みに皆さんからご理解をいただくことです。理解いただけない変化は、かえって成長の阻害になります。そのため、合併直後から現在まで私は事情の許す範囲で、急激で大幅な変化を意識的に行ってきておりません。しかし、一定の時間が経過し、徐々に「美郷」が皆さんの心に浸透し、一体感が出てきた現在、いよいよ大きな変化に着手すべき時期と判断しました。

 そこで、本年度は町が所有する公共施設のあり方について、検討に着手いたします。現在の各役場庁舎や教育施設、運動施設、温泉などが本当に現在のままでいいのか、どうあるべきなのか。将来のあり方を真剣に議論したいと思います。町の成長を望んでの公共施設のあり方について、広くご意見をいただきながらまとめてまいりますので、どうか皆さんにはこうした取り組みへのご理解をお願いいたします。

(広報「美郷」平成19年6月号より)

このページに関する情報