コラム「風」平成17年6月

意思疎通

秋田県美郷町長 松 田 知 己 

 私はかねてからコピーと言われるコマーシャルのキャッチフレーズに興味があり、意識して広告を見ますが、昨年の一番は秋田市建都四百年のコピー『秋田に「け」』でした。皆さんご存知のとおり、来ての「け」、食べての「け」、痒(かゆ)いの「け」。イントネーションの微妙な違いで意思を伝え、聞く側も理解するあたり、意思疎通では侮(あなど)るべからず秋田弁という感じです。

 次元は違いますが、熟年夫婦も絶妙な意思疎通を一言で図ることがあります。例えば「頼む」の一言でお茶がすっと出てくる、「いいか」の一言で読みかけの新聞を相手に渡すなど、オレンジ・レンジの歌ではありませんが、まさに以心伝心を絵に描いたような意思疎通が存在するようです。

 しかし、こうしたことは一定の年数を経なければ到達できない至極の境地だろうと思います。大抵は、きちんと言葉を重ねて意志疎通を図るのが普通です(負け惜しみではありません)。だから私たちは言葉を大切にしたいという認識に帰着する訳ですが、このことは全てに共通です。特に合併直後の美郷町では、言葉や文字を大切にした相互理解、意思疎通が不可欠です。

 地域づくりにはまずは意思疎通。そのためには情報交換が大切ということで、この度、町では皆さんと意思疎通を図っていくための情報として、今年の取り組み概要をまとめた「まちづくりガイド」を作成しました。町がどういう考えで何に取り組み、いくらお金を使うのかご覧いただきたいと思います。そして、それぞれご意見をまとめてください。今月下旬からは各地区で行政座談会を開催しますので、その際にご意見をいただきたいと思います。そうした形で情報を共有しながら意思疎通を図り、一つの方向を向いて良き地域づくりに歩んでまいりたいと思います。戦前の犬養毅元首相ではありませんが、「話せば分かる」のが私たち美郷の良さだろうと思います。

 ところでケント・デリカットさん。「け」の意味、分かっていたのかなあ?

(広報「美郷」平成17年6月号より) 

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