コラム「風」平成17年5月

花より団子

秋田県美郷町長 松 田 知 己 

  春爛漫(らんまん)。見事に咲いた桜の下では、何とも言えない豊かさに包み込まれます。「では一杯」という気分になりますが、皆さんはいかがでしょうか。

  さて、私たちは名目より実利を大切にするとき、「花より団子」という表現を使います。何となく現金な雰囲気が漂ってきますが、深さはあります。何が花で何が団子かによって、随分と結果が違ってくるからです。踏み込んで解釈すると、それは優先度や緊急度という言葉にも繋(つな)がってきます。

  この言葉、行政運営にも当てはまります。様々な認識で色々な課題がある中、またお金に限りがある中、私たちの暮らしを良くするために何が花で、何が団子か良く考えて取り組まないといけません。実利をどう考えるかです。17年度予算は、それぞれの分野で何が団子かを考えながら編成したつもりですが、教育分野では一番団子が安全安心に繋がる「耐震関係」でした。

  現在、美郷町には小中学校が10校あります。この中で昭和56年度以降に建築され、震度5程度でも被害がない施設が3校、補強・調査を要するのが7校です。最近大きな地震が続発しており、何より心配なところです。

  そのため、美郷町では町内の学校施設を早急に調査・補強することとし、7校のうち昨年度調査を実施した3校は補強工事を、残りの4校は本年度ですべて耐震調査を実施することにしました。特に代替機能がない部分ではこの整備を優先し、まずは安全安心を確保したいと思います。その分のしわ寄せは当然あります。しかし、仕方ありません。でも、この整備によって子供の安全確保と併せ、町民の避難所確保もできます。まずは最低限の「備えあれば憂いなし」が「団子」との認識で取り組むところです。

  先日、東京都大田区六郷にお邪魔してきました。多摩川の堤防、しっかりとしていました。百年に一度の災害にも耐え得る土手だそうです。目先の甘さより未来のおいしさを追った「団子」選択のようです。さすがだなあと思いながら、私は目先の団子、おいしい焼きそばを頬張った次第です。

(広報「美郷」平成17年5月号より)

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